兼業主夫看護師ブログ

兼業主夫看護師です。ADHDの妻を持ちながら、夢に向かう日常を淡々と書き連ねる初心者ブログです。

緊急で入院すると困ること

こんにちは。今回は少し暗い話になります。読み始める前に注意喚起させていただきます。

 

私の仕事は看護師で、歴も11年目、集中治療部の部署も7年目に突入してそれなりの経歴を持ち合わせてきました。集中治療室(以下、ICU)なので、いろんな患者さんを見てきました。

 

 

心臓発作であったり、転落事故、交通事故、意識消失したり、血管が裂けたりなど様々な理由をもって運ばれてきます。残念なことに、意識回復の見込みが厳しい方もいれば、ボディイメージの変化によって生活スタイルがガラッと変わる人、家族の生活をも変えてしまう大事になってしまうことも少なくはありません。

 

しかし、このような方ばかりではないことも事実で、IUCを経て一般病棟に移り、退院し、これまで通りの生活をされていく方も多くいます。

 

これまで、緊急入院されてきた患者を見て、私が感じる患者とその家族が抱える不安や悩み、困ることを看護師の目線で話していきたいと思います。

 

以下の内容でまとめました。

 

家族のいる場合

家族や会社との連絡が取れない

面会ができない

生活スタイルが一変する

県外出張先で入院される方もいる

 

独身の場合

物の場所が分からない

ペットの世話ができなくなる

 

共通すること

本人の延命治療の希望の有無が分からない

言うことを聞かず、安静が保てない

せん妄になりやすい

 

その他

身寄りがいないと、誰に頼めばいいか分からない

 

 

順番に見ていきます。

 

家族のいる場合

家族や会社との連絡が取れない

 私の病院のICUでは原則、携帯電話の使用を禁止しています。理由は、精密機械(ペースメーカーや電子カルテシステムなど)に影響を及ぼす可能性があるそうです。携帯電話が使えないため、外部との連絡が絶たれてしまいます。次の日大事な仕事であっても上司や関係者に連絡ができずに困る方や怒鳴られるからもたくさん見てきました。自宅で異変が起きれば家族も知ることになります。知人が近くにいれば出かけ先であっても家族連絡もできそうです。しかし単独であれば、身元が分かるまで時間もかかりますし、ICUに入ってしまえば面会謝絶となります。しばらくは家族の顔も見れなくなります。

 

 

面会ができない

 コロナの影響もあり、ICUでの面会は原則禁止しています。それでも、毎日病院に訪れては「今日の調子どうですか?」と聞きに来るご家族さんもおられます。このようなご家族さんには心痛みます。

 

生活スタイルが一変する

 具体的に言うと、人工肛門を造設する方は食生活や排泄方法、日常生活の不安も伴います。脳神経障害を発症し、麻痺を患った方は移動方法などのライフスタイルが激変しますし、アウトドア系の趣味をお持ちの方は控えるか、止めざるを得なくなるかもしれません。予定入院で予定された手術と比較して、結果は同じであっても心の準備期間が違います。急に上で記したことが明日から変わります、と言われたら誰でも衝撃と絶望を受けます。

 

 

県外出張先で入院される方もいる

 出張先の病院で入院となると、家族も来院するのに時間がかかります。頻回に自宅と病院の往復もできないので、近くのホテルに泊まられている家族もいました。実際に私の父も夫婦旅行先で食中毒に見舞われ、危うく緊急入院というところだったのですが、抗生剤と点滴で軽快し内服をもらった帰ってきたことがありました。それ以来、海鮮を食べなくなりました笑。

 

 

独身(単身)の場合

物の場所が分からない

 親と子が同居している家庭は最近は少なくなっていると思いますが、親の通帳とかハンコとか保険証、お薬手帳の場所が分からなくて困るかたも多いです。私も親の元を離れて県外で住んでいるので、もし親が入院した場合、意識があれば看護師さん経由で場所の特定は可能かもしれません。しかし、意識がなければ聞くこともできないので字宅捜索が始まるだろうと思います。両親が住んでいれば回避できそうですが、一緒に住んでいても特に男性は保管場所が分からないケースが多いです。

 

 

ペットの世話ができなくなる

 ペットを飼われている単身者が緊急入院すると、ペットの世話をする人がいなくなります。コミュニケーションがとれていれば家族や近所の友人などに世話の依頼をできるとは思います。しかし、周囲の人が気付くのは1日2日経過してからだと思うので、その間の世話は放置となります。大事に至った時、取り残されたペットの世話や引き取りなど事前に話し合っていれば、戸惑わずに済むと思います。

 

 

 

 

共通すること

本人の延命治療の希望の有無が分からない

 意識障害が生じて意思疎通が困難な方や一命はとりとめたけれども目を覚まさない方の場合、治療方針や今後の展望についてを決断しないといけない場面に出くわすこともあります。生前に「延命治療は希望しないから、もしものことがあってもそのままにしてほしい」と子やパートナーに遺言のような形で言い残す方も多いようです。しかし、実際に生命の危機に陥ると救急車を呼び、治療を選択する家族がいるのも事実ですし、割り切って考えることはできないと思います。生前には延命治療を拒否していても、家族は希望があるなら治療してほしいという家族もたくさんいます。ジレンマが生じ、医療者側も辛いところではあります。

 

 

言うことを聞かず、安静が保てない

 緊急入院によって、環境の変化や行動制限などによりストレス負荷がかかります。そのため、易怒的になる方も多数います。「家族と連絡を取らせてくれ!」、「明日会社の会議があってなんとしても帰りたいんだ!」、「会社に伝えたいことがある!家族でもいいから携帯を返してくれ!」など様々な言い分があります。可能な限り対応したいとは思っていますが、私たちも病院の底辺スタッフなので規則は守らなければなりません。仕事を優先したい気持ちも理解できますが、こちらも命を預かる仕事なので「はい、分かりました」と、帰宅させるのは不可能であることは理解していただきたいです。

 余談ですが、映画とかドラマでも医者や看護師の言うことを聞かずに離院するシーンをよく見かけます。大胆な行動として評価されているとは思いますが、「そんなことしたらマジでこっち(医療者)としては迷惑なんやけど」って突っ込んでイライラしています笑。

 

 

せん妄になりやすい

 高齢の方や性格が一癖も二癖もある方はせん妄になりやすい傾向にあります。初めての入院、緊急入院、環境の変化、体動の制限、食事制限、など様々な要因によってストレス負荷がかかります。それにより、幻視や幻聴を引き起こし現実との区別がつかずに言うことが守れなかったり点滴を抜いたり、安静制限があるにもかかわらずに「帰る」と言ってベッドから降りようとする行動も頻繁に起こしがちです。ICUでは特にそういった行動が顕著だそうです。

 

 

その他

身寄りがいないと、誰に頼めばいいか分からない

 本当に配偶者や子、親戚などがいない、もしくは身内がいても感動して関りを持ちたくないと言われた方に対して、事務手続きやおむつなどの消耗品の購入依頼に関して言えば対応困難です。治療方針の決定支援に関しても、誰が最終決断者なのかハッキリとしたことが分からないことがあります。私も詳しくは知りませんが、民生委員という方が代表して対応するという話を聞いたことがあります。

www.dtod.ne.jp

 

以上、たくさんのことを書きましたが看護師の視点からの意見なので、患者様、家族様からしたらもっと多くの不便なことや苦労されたことが出てくるかと思います。

 

なので、今回挙げた内容は氷山の一角のような気がします。疾患ごとにライフスタイルの変化はそれぞれあると思いますので。

 

最近、私の地域では緊急入院患者がICUから出ては入りの繰り返しで落ち着かないのに加えてスタッフのコロナ感染による看護師の減少により、患者は減らないわスタッフは減るわで毎日が全力疾走している感じで私たちの顔も笑顔が無くなり休み明けでも疲れが取れないほどでした。

 

 

しかし、昨日は患者も少なく、加えて救急搬送される人も比較的少なかったため、いつぶりかくらいに落ち着いて仕事をすることができました。

 

緊急入院で困る患者、家族、医療者スタッフを見てきたのでちょっとまとめさせていただきました。

 

事故などは不意に起こるもので意図的に回避するのは不可能です。それでも、日々の生活の中で禁煙や禁酒、軽い運動など少しでも健康を意識することができれば、大きく急変発症率を抑えられます。

 

小さな積み重ねで大きな後悔をせずに済みます。皆さまも体を大事にしてくださいね。